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天網恢恢疎而不漏

ブラック企業に関する基本的な考え方(1)

ブラック企業に関する基本的な考え方

 

はじめに

 

ーーしまった。うちの会社は,ブラック企業

こう感じたとき,まずは,どう動くべきだろうか。

気付くのは早ければ早いほどよいが,実際には会社に洗脳されていて,これが遅くなってしまうことも多い。

諦めて辞めるというのは極めて容易だが*1,残業代を諦めるのが惜しい場合もあるだろうし,感情的に許せないということもあるだろう。

そうした場合,たたかう場合と,あきらめる場合の費用と効果を総合的に検討し,自分自身の状況も踏まえ,もっとも合理的な手段を選ぶ必要がある。

 

本稿では,筆者の経験を踏まえて,ブラック企業に対する基本的な考え方と,たたかう場合に気をつけるべきことを,手短に共有したいと思っている。

 

ブラック企業とは何か

 

ここでは,ブラック企業とは,少なくとも,以下の要件を備えているものをいう。

 

  • 労働法を中心とする,法令違反の客観的事実があること
  • 理性的な話し合いができないこと

 

 

そもそも近代的な社会とは,その構成員が,法令を遵守して自由に行動することを前提としている。更にいえば,法令を遵守する限り,各人の行動は自由である。

だから,単に事業内容が気にくわないから(例えば転売屋であるとか,光回線の営業会社であるとか)とか,社長の容貌が胡散臭いからといって,または営業方針が過酷であるからというだけで,ある企業を「ブラック企業」と非難することは,正当ではない。

このような方法が正当とされる社会では,我々自身が,例えば趣味がオタク的であるからとか,ファッションセンスがないからといった理由で「人間失格」「キモオタ」といった言葉で公然と非難されることが,正当化されてしまうだろう。企業の労務政策が法令違反に当たるかどうかの考え方とケーススタディーは,後ほど紹介する。

これに加えて,「理性的な話し合いができないこと」を要件としたい。というのも,労働法を網羅的に遵守することは,我々が思っているよりも難しいことであるからだ。六法全書を丸暗記したとしても,なお難しい。

とくに労働法の分野では,法規範が判例に依拠していたり*2,喧々囂々の議論が交わされる事例があったり*3するうえ,労働者の状況はつねに個別具体的であるので,法規や判例の当てはめが,必ずしも容易ではない。

したがって,仮に,会社の労務政策に法令違反を見つけても,性急に悪意だ搾取だと決めつけて対決姿勢をとるのではなく,まずは穏健な方法で,なるべくなら労働組合を通して,話し合いを申し入れることが望ましい。

我々の側が穏健に話し合いを申し出ているのに,不当な処分や報復が待っていたり,カネのためなら何でもする種類の恵まれない弁護士を持ち出して恫喝や引き延ばしを図る場合は,残念ながら,ブラック企業と関わり合いを持ってしまったと判断するべきだ。

 

ブラック企業の本質

 

君は,ブラック企業と関わり合いになってしまった。人生においてこれほど不運なことはないが,まずは冷静になって,「敵」の本質を見極めてみよう。

ほとんど全てのブラック企業は,次のような本質を持っている。

 

  1. ブラック企業は,金銭の獲得を目的としている
  2. ブラック企業は,ペナルティーがメリットよりも小さければ,法令に違反したり,信義則に違背しても構わないと考えている。
  3. ブラック企業は,誠実な話し合いではなく,権力や経済力によって,問題を解決したいと考えている
  4. ブラック企業は,アメとムチによって従業員の不満を抑制しているので,「メンツ」を徹底的に重視する

 

ちなみに,(3)に「暴力」を加えると,暴力団の定義とほとんど変わらなくなってしまう。じっさい,暴力を繰り出してくるブラック企業も決して珍しくない。だからこそ,たちが悪い。

在職でブラック企業と対峙する場合,物理的な暴力がなくとも,精神的な暴力ーーすなわちパワーハラスメントや退職強要は,ほぼ間違いなく繰り出される。筆者自身,とあるブラック企業から物理的な暴力も精神的な暴力も受けて,病院通いを余儀なくされたことがある。

つまり,我々が対峙する敵は,ほとんど「反社会的勢力」とイコールの存在なのだ。ここから,次の原則が導き出せる。

 

  1. ブラック企業を恐れ,不当な要求に屈してはならない
    足下を見られ,さらなる不当な要求が繰り出される。

  2. ブラック企業に対し,孤立して立ち向かってはならない
    ブラック企業は,ブラックな弁護士や産業医労務コンサルタントなどと結託して向かってくる。到底,ひとりの労働者が太刀打ちできる相手ではない。

  3. ブラック企業は,違法行為に熟練している
    我々とっては最初の対決でも,ブラック企業の関係者は,すでに多くの対決を経験し,幾人もの良識ある労働者を力で屈服させ,なお逮捕・投獄に至らないまま,今日に至っている*4

  4. ブラック企業とのやり取りは,全部を記録に残さなければならない
    さもないと,揚げ足をとられたり,前言を翻されたりして,消耗戦に持ち込まれる。

  5. ブラック企業に関する情報は,すべてが重要である
    不誠実な相手の行動は,客観的な状況によってしか予測できない。

  6. ブラック企業に対しても,違法な方法で反撃をしてはならない
    自覚的な犯罪者にとって,法と正義に敗れることは,ある程度織り込み済みである*5。しかし,べつの犯罪者に敗れることは,絶対に受忍できない屈辱である。

  7. 社会の大多数を占める良心的な市民は,いずれも,あなたの味方である。
    正々堂々と立ち向かえば,道は開ける。

 

(つづく)

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*1:場合によっては辞めさせてくれない事もあるが

*2:整理解雇の3要件など

*3:最近ではハマキョウレックス事件など

*4:例外的ではあるが,じつは元受刑者が関与しているような,漆黒のブラック企業も存在する

*5:君に示談金を払う羽目になったとしても,同額以上のカネを他の従業員から搾取できるなら,それでいいと考えている