Serve One Another

天網恢恢疎而不漏

鳥商のおもひで(8)

鳥商社の事業は,その後も,極めて順調であった。

 

さて,示談金を受け取った後も,細かく多く続けていた各種のアルバイトを,辞めてはいなかった。しかし,ある人との出会いをきっかけに,一挙に辞めることになってしまう。

 

その人が,岡本君である。岡本君というのは,都内の某有名大学に通っていた理系の大学生なのだが,彼と出会った経緯は,じつに面白いものであった。

当時,特にヒマな,または資金需要があるときの臨時のアルバイトとして,警備員の仕事を,グリーン警備という会社でやったことがある。

このときの体験談も面白いのだが,それはさておき,警備員は,業法上,わりと長時間の研修を受けなければならないことになっている。

長時間の研修といっても,警棒の使い方といった最低限のものを除いては,部屋の中に座ってビデオを見ているだけという形式的なものにすぎない。

このビデオを見ながら,筆者はあまりにもバカらしいと思ったので,英語版Wikipediaの記事をプリントして持参し,日本語版に投稿するべく,素人ながら翻訳を行っていた。

 

そうすると,休憩中に,彼のほうから話しかけてきたのである。

なんでも,こんな場所で同年代の男を見つけるとは思っていなかったので,びっくりし,なおかつ,面白そうであるから,話しかけたとのことであった。

さっそくその日の夜,西新宿の磯丸水産で酒を酌み交わすことにした。

 

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▲本件磯丸水産*1

 

かれ曰く,かれはSymphonyを利用したiPhoneアプリの開発ができる,そこで,ある人と組んで旅行関係のアプリを立ち上げようとしている,話が合うだろうから,今度会ってみて欲しい,ということであった。

この人とは後日会うことになるのだが,閑話休題,それ以降,久しぶりにベンチャー的なことを思い出して,肉体労働をするのがバカらしくなってきたのである。

 

そして,ある日。

岡本君から「これから飲まないか」と急に誘われたときのことだった。

しかし,あと30分でアルバイトの期日がある。

ところが,この日,私はたまりかねて,店長に電話をすると,

 

「ああもしもし」

「すみません,前田ですけど」

「はい」

「ごめんなさい,バイトォ,つまらなさすぎるので,やめまああああああす!!!」

「えっ ちょ」

(ガチャ) 

 

……というとんでもない方法で,バイトを辞めてしまったのである。

他のバイトも,順次(普通の方法で)辞めることにした。

 

これはこれで非常識なのだが,この行動にはいちおう背景がある。

 

以前,有給のインターンシップをしていた某社で,人事の人が,これまた日本人らしい人で,

アルバイトを解雇したいのに,解雇をするという電話をするのが気まずいという理由で,社長にも報告しないまま,ひたすら電話をすることから逃げ回り

結局,解雇した(と上層部は認識していた)アルバイトが出勤してきてしまい,社長が収拾にあたる,という光景を目撃したことがあった。

双方にとって,これほど無益な話はない。

授業の開始時間と終了時間が等しく守られるべきであるのと同様に,雇用契約にせよ,他のどんな関係にせよ,始まりも終わりも明示的に,というのが,

この日以降,筆者のポリシーとなったのである。

(ただし,社会は未だに黙示主義で動いている人が多いようだ。このポリシーが原因で,クララオンライン時代,周囲の無責任のために,相当に苦しめられることになる)

 

しかし,寒い日も暑い日も,40インチのタイヤを履いたバカみたいなクロスバイク*2で,三鷹から花小金井まで,あちこちで働いていたのをやめたことで,時間的にもずいぶん楽になった。

 

職業や習慣というのは,面白いもので,一度サイクルを作ってしまうとそれに違和感を覚えることは少なくなり,近くでこれを指摘してくれる第三者がいないと,深みにはまっているときは,どこまでも深みに落ちてしまう。

 

アルバイト掛け持ちによる過重労働が,どうもこの頃の酒浸りの原因であったようだ。筆者は次第に健康を取り戻し,事業に邁進するようになってゆく。

 

 

*1:引用元:磯丸水産@新宿 : ラーメン食べたら書くブログ

*2:高知から持ってきたAnchor UC9を改造したものである