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天網恢恢疎而不漏

狭小住宅をやめるとわかること

前回に引き続き,狭小住宅をやめることのメリットについて話したい*1

 

実家に居たころはそれなりに趣味があったのに,今や「無趣味だ」との非難をほしいままにしている筆者であるが,最近,重要なことを思い出した。
なんと,「分からない事は,暇な時間があればいつでも資料を取り寄せて調べ,研究することができる」といういわば当然のことを思い出し,5年ぶりに図書館に足を運んだ。そして,その書籍の束を,どうどうとリビングの机に置いたのである。

先日までは,狭小住宅のために精神的な余裕がなく,また作業机に置くとそのせいでほかの作業が一切できなくなるので,書籍を借りることも買うことも徹底的に控え,書類という書類はスキャンして捨てていたのである。


5年ぶりというのは,ちっとも大袈裟な議論ではない。高校生の頃に,高知城下の図書館に行って以来,すこしも図書館を利用していないので,5年ぶりなのである。
もっとも,本を読んでいなかったわけでない。Kindleを利用して読んだ書籍の数は100冊を下らない。統計的には,筆者は,月間3冊弱の本を読んでいる。しかし,その時間も空間もなかったので,図書館で実際の本を手に取ることはしていなかった。

 

近頃はよく,夜になると外で活動することができず,屋内でも,眠いから注意力を要することはできないので,あまりにも手持ち無沙汰であるから,つい飲酒に向かっていた。
しかし,全日本断酒連盟のウェブサイトによれば,飲酒習慣自体に問題があるというより,なぜ酒を飲まずに生きてこられなかったのかという根本の所に問題があるのであって,これを解消しない限りは,何度でも再飲酒することになるという。

 

「酒」ではなく、自分の問題として認めることです。 私たちはあまりにも多くのものを失ってきました。 「酒が好き」だけでは説明できません。私たちには飲む理由がありました。 酒の力を借りなければ心の安定が保てなかったからです。 飲み過ぎてアルコール依存症になったのではなく、依存症になるまで飲まなければ生きて来られなかった…この事実を認めることです。


……あまり禁酒の話をすると,筆者が相当重度のアル中であるかのような印象を与えてしまうので良くない*2が,結局この観点に立ち,飲酒をそもそもしていなかった高校以前の時代に,答を見出そうと考えた。

すると,例の高知城下の図書館*3で本を借り,読んでいた頃の筆者を思い出すことができた。
たしか当時は,家があまりにも貧しいので,職安に通う傍ら*4この図書館に出向き,ルソーの『人間不平等起源論』を読んだことがある。やべえよ……意味分かんねえよ……


人間不平等起源の話が始まると思いきや,ルソーの自分語りが先に出てきて,しまいには家庭教師か何かのお姉さんがきれいだとかそんな話に至り,困惑したことを覚えている。
そんなことはどうでもよいのだが,つまり,昔は,分からないことがあったら調べることにしていて,その為の主要ソースとして図書館があったのである。

ところが,最近は,昔と同様に色々な疑問を思いつくし,経営者をクビになってからは,その時間もあったのに,まったく調べものをせず,分からない事は,なかったことにしていた。


さらに記憶を掘り返すと,大学に行っていたころは,三鷹市井之頭の狭小県人寮を拠点に,少しは調べものをしていた。何かしらの質問をする目的で教授の研究室に突撃したり,教授の自宅近くの喫茶店で,時間を取ってもらったこともある*5。当時はブックオフで毎月2万円前後を費消していたという記録も残っている。
その書籍類も今では8冊しか残っていないのであるが*6,図書館は利用していなかったものの,まだまだ,知的好奇心が残っていたのである。

 

そこから転々と転居を繰り返したものの,書籍はハコに入れて大事にしていたのであるが,当時勤めていた*******未払賃金を請求したところ,翌朝一番に呼び出されて保管場所の占有を取り上げられて,『処分同意書』なるものにサインさせられてしまったので,ほぼ全部なくなった。おー怖い怖い……

特に大事なので手元に置いていたものさえも杉並区の狭小住宅で処分のやむなきに至り,現在の8冊に行き着くのである。

 

▼座右の書。金銀の価格変動のところは読み飛ばして一向に差し支えないので,経済活動の本質を理解するために読むべき一冊*7

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

 

 

 

なお,コンピューターで調べものをすることは,基本的にはない。「参照する」程度のことはするが,メディアとしては一切信用していないのだ。
情報をアウトプットするツールとしてのコンピューターは信頼しているが,インプットするツールとしては,よほど工夫された暗記用のサービスを除いて,使い物にならない。


小学生みたいに何でも書き写すのが良いというわけではないが,コンピューターの場合は,人間が手を動かしてページをめくる場合と違い,ごくわずかの労力によって画面の内容自体をスライドさせることで情報をインプットするので,どうにも記憶に残らないのだと思う。夏見たドラマの内容をいちいち覚えていないのと全く同じことで,オーディオビジュアル的な情報の摂取手段は,感覚を刺激する能力には秀でているものの,あまりにも受動的であるために,思索の用に供する情報には適さないように思う。


禁酒の話に戻るが,こういうわけで,かつては,分からない事は書籍を調達して調べていたし,このブログの昔の記事だって,よく見れば当時読んでいた書籍の内容が色濃く反映されている。
ところが,本をハコから出すことが空間的にも時間的にもできなくなってから,どうも,ものすごく反知性的な生活習慣になっていたようだ。

 

「時間的に」の部分は後の記事に譲るが,みなさん,内向的な性格の人は,都心の狭小住宅に住むとバカになって酒浸りになりますよ。


ちなみに大学に行くと,生涯賃金は4500万円増加するが,実家から出て上京するのであれば,生活費だけで年に120万円は掛かるはずだし,学費も入学金を含めれば平均的に毎年100万円はかかるというべきだから,1000万円弱を費消するといってよいだろう。
親に借りてもらうにせよ,自分で借りるにせよ,1000万円を卒業後35年かけて返済すると,利息総額は400万円にも及ぶ。
とすれば,そのメリットは3000万円程度に過ぎず,中目黒のマンションひとつ購入することができない。残業代が出ないことで有名なクリエイトエス・ディーの廣瀬泰三社長のような六本木のマンションなど,ゆめのまたゆめだ。

 

善良な生活習慣がすでにあるのに,これを放棄し,または結果的にこれが破壊されるような状況を自分から作り出してまで,東京に来ることはない。来るとしても都下に留めておこう。おじさんとの約束だ。

*1:あーバカみたいだ。じゃあ上京当初から,八王子かどこか,家賃が安いアパートに住んでおけば良かったよ

*2:純量にして毎日平均40ミリリットルぐらいを飲んでいる

*3:県立図書館。市立図書館に統合するということで,潰されてしまったらしい

*4:学校権力に屈服するのがいやだったので,高校の就職課にはいっさい話を持ち込まなかった

*5:ケインジアン岩井克人先生である

*6:残りは捨てたものが大部分,貴重なものはスキャン代行サービスに出してしまった

*7:アフィがついてますが筆者のじゃなくてはてなブログのです