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天網恢恢疎而不漏

ブラック企業に関する基本的な考え方(2)

# ブラック企業に関する基本的な考え方(2)

 

(前回の記事)


和戦いずれか

ブラック企業の被害を受けたことに気がついたら,ひとまず,この被害を回復するために立ち向かうか,あるいはこれ以上被害を受けないために離職するかの,いずれかを決めなければならない。
この時大事なのは,常に最悪のケースを想定して考える,ということだ。労働法違反が明らかなケースであればあるほど,大部分のブラック企業は,組合から団体交渉を申し込まれるや否や和解を申し出ることがあるし,労基署が入れば,すぐに決着することも多い。
前回,ブラック企業の3本質で確認したように,ブラック企業は,物事を,誠実な話し合いではなく,力関係や金銭で解決するものだと,いわば獣的に考えている。だから,力のある組合や国家権力に勝てるはずがないと見るや,たちどころに金銭を提供するのだ。


しかし,個別の労働紛争が正当に解決した場合でも,ブラック企業が何らかの報復を仕掛けてくることは多い。たとえば,残業代は支払ってきたものの,その直後から上司による執拗なパワーハラスメントが始まり,社内のチャットも監視され,ちょっとでも問題になりそうなことをいうと,降格などの懲戒処分が降ってくる,といった具合だ。
だから,ブラック企業が現状敷いている秩序ーブラック企業の支配者のゆがんだ常識が,日本の法規範に優越する異常な秩序ーに反抗するということは,どんなに小さな事であっても,個別問題に関する紛争に留まらず,長期的な総力戦を招くものであると覚悟しよう。

 

まずは,以下の点をチェックしたい。

 

  1. 生活が持続的であるかどうか
    ブラック企業は,ときに,労働者の生活が困窮して戦意をなくすことを企図して,スラップ訴訟を起こしたり,無理筋でも解雇を仕掛けてくることがある。このとき,預貯金があるかどうか,生計費のうち固定費が多いか少ないか,妻子を預けるなど頼りにできる親戚が居るかどうかは,決定的に重要である。


  2. 自らに瑕疵がないかどうか
    これは業界全体でいわれていることだが,使用者側の弁護士は,労働者側のそれより,証拠が豊富であるから簡単だとされている。
    会社の入退室記録から電子メールまで,使用者は,さまざまな情報を把握している。
    だから,例えば営業に行ったのにパチンコでサボっていたとか,女子社員にセクハラのメールを送信したことがあるといった覚えがある場合は,判例上,時効によって懲戒権が消滅するとされている,最後にそれらの行為をしたときから5年間程度が経過するまでは,会社とたたかうことはできないと考えよう。

  3. 社会的に孤立していないかどうか
    ブラック企業との対決が始まると,会社関係の人間関係は,一時に寸断されることになる。このとき,家族や趣味の仲間との十分親密関係があるかどうかが,非常に重要な意味を持ってくる。人は,衣食住が足りていても,孤独の中では生きていけないからだ。

 

 

これらの点が概ねオーケーであれば,ひとまず,ブラック企業と対決する足場はあるといるというべきである。

 

ゴールを決める

会社に立ち向かうことが可能な状況にあって,その決心がついたら,まずはゴールを決めよう。

ゴールは,原則として「退職和解」であるべき

ここで一言。解雇を争う場合でも,残業代だけなど,それ以外の事項を争う場合でも,基本的に,闘いが終わったら退職するつもりでいよう。
単純に金銭的な利害のことを考えれば,復職を争ったほうが有利な場合もあるし,お客さんや同僚に愛着があるかもしれない。

それでも,あなたは,ブラック企業にこれ以上所属するべきではない


その理由は,次のとおりだ。

 

  1. ブラック企業には,ブラック企業以外では働くことができない人材が集まっている。
    ブラック企業で好き好んで働いている人々には,(大変失礼ではあるが)基本的に,十分な残業代を払い,有給休暇も取れるような職場では採用されないことが原因で,そこで働いている人が多い。
    例えば筆者が以前争ったブラック企業では,私が在籍した短い間でも驚くほどの勢いで退職が相次ぎ,そのうち優秀なエンジニアや重役は,その会社の40倍も売上があるホワイトな一部上場企業に引き抜かれていった。腐りきったガバナンスに呆れ返り,わざわざ日本まで働きに来たにも拘わらず,出身国に帰っていった同僚もいた。

    一方で,ブラックな労務管理,すなわち犯罪行為に加担していた顔ぶれは,誰も聞いたことがない大学を出た無資格の財務担当役員や,社長と同郷で,他の社員をイジメ倒したことでも有名な総務担当など……市場では実力がないと見做されるだけでなく,経歴からして胡散臭く,その実ブラック企業に首までドップリつかり,倫理感まで怪しくなっている筋金入りの人たちであった。
    こういう人たちと一緒に何年間働いても,あなたや,家族にとってプラスになることは必ずしも多くない。

  2. ブラック企業で働くことは,従業員にとっても大きなレピュテーションリスクである。
    去年問題になった電通や,ブラック企業大賞となったワタミが好例であるように,ブラック企業(や,スルガ銀行やTATERUのような違法企業)としてメディアに大々的に取り上げられると,親戚や友人一同に心配されるし,社交的な場や転職活動の場で,印象が悪くなることはあっても,良くなることだけはない。

    それに,前回の記事で述べたように,ブラック企業は,金銭の獲得を目的として労働法違反行為を組織的に実行する,反社会的勢力に類似するものである。このような勢力とは,どのような形であっても関与しない方がいいことは,いうまでもない。
    筆者が以前争ったブラック企業は,一時期,グーグルで社名を検索すると1ページ目に,社長自らタイムカードの捏造を命じる会議の反訳がヒットしたり,「タイムカード 捏造」なんていう不名誉なキーワードで上位にランクインしたりた。
    反社会的勢力に類似する組織と「うまく」付き合って,自分だけは損をしないでやっていける,いつでも離脱できるなんていうのは,素人の甘えた発想である。違法行為を厭わない相手の出方ほど,素人に予想がつかないものはない。

    違法なものとは一切交際しないことが,身を守る唯一の方法である

  3. ブラック企業は,知性が敗北した結果として出現している。
    筆者も一応,会社を経営をしたことがあるが,ふつう,経営者は,法律を遵守しながら売上をつくり,事業を継続することに心を砕いている。

    ところがブラック企業は,違法行為を開き直り,ビジネスモデルの一環として,残業代の不払いや最賃割れなどを行っている。つまり,法令を遵守して会社を伸ばすという知的な努力を放棄しているのだ。
    例えば,一部上場のブラック企業・クリエイトエス・ディーでは,残業代が払われないので,定年まで働けば,マンションひとつ買えるぐらいにはタダ働きを強いられる。
    それなのに,クリエイトエス・ディーはライバル店の隣に出店して安値攻勢を仕掛け,会社は160億円もの営業利益を上げている。
    残業代が払えないのではなくて,商品同様に労働力も安く買いたたきたいから,労基署が忙しくて踏み込んでこないと決め込んで,意図的に労基法に違反しているのだ。
    このような会社で働いても,さまざまな創意工夫や,先端的なイノベーションに触れる機会は,まず訪れない。
    真摯な研究や経営努力ができる人材はとっくに他社に逃げているし,既に違法行為のうま味を知っているので,いざとなったら,あなたを含む社員やバイトを首にしたり,サービス残業をさせたり,その他,何らかの違法かつラクな手段で穴埋めをすればいいと思っているからだ。

 

 

(続く)

ブラック企業に関する基本的な考え方(1)

ブラック企業に関する基本的な考え方

 

はじめに

 

ーーしまった。うちの会社は,ブラック企業

こう感じたとき,まずは,どう動くべきだろうか。

気付くのは早ければ早いほどよいが,実際には会社に洗脳されていて,これが遅くなってしまうことも多い。

諦めて辞めるというのは極めて容易だが*1,残業代を諦めるのが惜しい場合もあるだろうし,感情的に許せないということもあるだろう。

そうした場合,たたかう場合と,あきらめる場合の費用と効果を総合的に検討し,自分自身の状況も踏まえ,もっとも合理的な手段を選ぶ必要がある。

 

本稿では,筆者の経験を踏まえて,ブラック企業に対する基本的な考え方と,たたかう場合に気をつけるべきことを,手短に共有したいと思っている。

 

ブラック企業とは何か

 

ここでは,ブラック企業とは,少なくとも,以下の要件を備えているものをいう。

 

  • 労働法を中心とする,法令違反の客観的事実があること
  • 理性的な話し合いができないこと

 

 

そもそも近代的な社会とは,その構成員が,法令を遵守して自由に行動することを前提としている。更にいえば,法令を遵守する限り,各人の行動は自由である。

だから,単に事業内容が気にくわないから(例えば転売屋であるとか,光回線の営業会社であるとか)とか,社長の容貌が胡散臭いからといって,または営業方針が過酷であるからというだけで,ある企業を「ブラック企業」と非難することは,正当ではない。

このような方法が正当とされる社会では,我々自身が,例えば趣味がオタク的であるからとか,ファッションセンスがないからといった理由で「人間失格」「キモオタ」といった言葉で公然と非難されることが,正当化されてしまうだろう。企業の労務政策が法令違反に当たるかどうかの考え方とケーススタディーは,後ほど紹介する。

これに加えて,「理性的な話し合いができないこと」を要件としたい。というのも,労働法を網羅的に遵守することは,我々が思っているよりも難しいことであるからだ。六法全書を丸暗記したとしても,なお難しい。

とくに労働法の分野では,法規範が判例に依拠していたり*2,喧々囂々の議論が交わされる事例があったり*3するうえ,労働者の状況はつねに個別具体的であるので,法規や判例の当てはめが,必ずしも容易ではない。

したがって,仮に,会社の労務政策に法令違反を見つけても,性急に悪意だ搾取だと決めつけて対決姿勢をとるのではなく,まずは穏健な方法で,なるべくなら労働組合を通して,話し合いを申し入れることが望ましい。

我々の側が穏健に話し合いを申し出ているのに,不当な処分や報復が待っていたり,カネのためなら何でもする種類の恵まれない弁護士を持ち出して恫喝や引き延ばしを図る場合は,残念ながら,ブラック企業と関わり合いを持ってしまったと判断するべきだ。

 

ブラック企業の本質

 

君は,ブラック企業と関わり合いになってしまった。人生においてこれほど不運なことはないが,まずは冷静になって,「敵」の本質を見極めてみよう。

ほとんど全てのブラック企業は,次のような本質を持っている。

 

  1. ブラック企業は,金銭の獲得を目的としている
  2. ブラック企業は,ペナルティーがメリットよりも小さければ,法令に違反したり,信義則に違背しても構わないと考えている。
  3. ブラック企業は,誠実な話し合いではなく,権力や経済力によって,問題を解決したいと考えている
  4. ブラック企業は,アメとムチによって従業員の不満を抑制しているので,「メンツ」を徹底的に重視する

 

ちなみに,(3)に「暴力」を加えると,暴力団の定義とほとんど変わらなくなってしまう。じっさい,暴力を繰り出してくるブラック企業も決して珍しくない。だからこそ,たちが悪い。

在職でブラック企業と対峙する場合,物理的な暴力がなくとも,精神的な暴力ーーすなわちパワーハラスメントや退職強要は,ほぼ間違いなく繰り出される。筆者自身,とあるブラック企業から物理的な暴力も精神的な暴力も受けて,病院通いを余儀なくされたことがある。

つまり,我々が対峙する敵は,ほとんど「反社会的勢力」とイコールの存在なのだ。ここから,次の原則が導き出せる。

 

  1. ブラック企業を恐れ,不当な要求に屈してはならない
    足下を見られ,さらなる不当な要求が繰り出される。

  2. ブラック企業に対し,孤立して立ち向かってはならない
    ブラック企業は,ブラックな弁護士や産業医労務コンサルタントなどと結託して向かってくる。到底,ひとりの労働者が太刀打ちできる相手ではない。

  3. ブラック企業は,違法行為に熟練している
    我々とっては最初の対決でも,ブラック企業の関係者は,すでに多くの対決を経験し,幾人もの良識ある労働者を力で屈服させ,なお逮捕・投獄に至らないまま,今日に至っている*4

  4. ブラック企業とのやり取りは,全部を記録に残さなければならない
    さもないと,揚げ足をとられたり,前言を翻されたりして,消耗戦に持ち込まれる。

  5. ブラック企業に関する情報は,すべてが重要である
    不誠実な相手の行動は,客観的な状況によってしか予測できない。

  6. ブラック企業に対しても,違法な方法で反撃をしてはならない
    自覚的な犯罪者にとって,法と正義に敗れることは,ある程度織り込み済みである*5。しかし,べつの犯罪者に敗れることは,絶対に受忍できない屈辱である。

  7. 社会の大多数を占める良心的な市民は,いずれも,あなたの味方である。
    正々堂々と立ち向かえば,道は開ける。

 

(つづく)

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*1:場合によっては辞めさせてくれない事もあるが

*2:整理解雇の3要件など

*3:最近ではハマキョウレックス事件など

*4:例外的ではあるが,じつは元受刑者が関与しているような,漆黒のブラック企業も存在する

*5:君に示談金を払う羽目になったとしても,同額以上のカネを他の従業員から搾取できるなら,それでいいと考えている

日本企業と若年労働者の未来について考えてみた

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・今後の労務政策においては,時代情勢の変化によって社員の労働生産性が大きく変化することを前提として,年金型の前借り・先払いといった,高度の安定性を前提としたシステムを最初から作らないことが大事

鳥商のおもひで(8)

鳥商社の事業は,その後も,極めて順調であった。

 

さて,示談金を受け取った後も,細かく多く続けていた各種のアルバイトを,辞めてはいなかった。しかし,ある人との出会いをきっかけに,一挙に辞めることになってしまう。

 

その人が,岡本君である。岡本君というのは,都内の某有名大学に通っていた理系の大学生なのだが,彼と出会った経緯は,じつに面白いものであった。

当時,特にヒマな,または資金需要があるときの臨時のアルバイトとして,警備員の仕事を,グリーン警備という会社でやったことがある。

このときの体験談も面白いのだが,それはさておき,警備員は,業法上,わりと長時間の研修を受けなければならないことになっている。

長時間の研修といっても,警棒の使い方といった最低限のものを除いては,部屋の中に座ってビデオを見ているだけという形式的なものにすぎない。

このビデオを見ながら,筆者はあまりにもバカらしいと思ったので,英語版Wikipediaの記事をプリントして持参し,日本語版に投稿するべく,素人ながら翻訳を行っていた。

 

そうすると,休憩中に,彼のほうから話しかけてきたのである。

なんでも,こんな場所で同年代の男を見つけるとは思っていなかったので,びっくりし,なおかつ,面白そうであるから,話しかけたとのことであった。

さっそくその日の夜,西新宿の磯丸水産で酒を酌み交わすことにした。

 

http://livedoor.blogimg.jp/next_step_to/imgs/d/d/dddf04b9.jpg

▲本件磯丸水産*1

 

かれ曰く,かれはSymphonyを利用したiPhoneアプリの開発ができる,そこで,ある人と組んで旅行関係のアプリを立ち上げようとしている,話が合うだろうから,今度会ってみて欲しい,ということであった。

この人とは後日会うことになるのだが,閑話休題,それ以降,久しぶりにベンチャー的なことを思い出して,肉体労働をするのがバカらしくなってきたのである。

 

そして,ある日。

岡本君から「これから飲まないか」と急に誘われたときのことだった。

しかし,あと30分でアルバイトの期日がある。

ところが,この日,私はたまりかねて,店長に電話をすると,

 

「ああもしもし」

「すみません,前田ですけど」

「はい」

「ごめんなさい,バイトォ,つまらなさすぎるので,やめまああああああす!!!」

「えっ ちょ」

(ガチャ) 

 

……というとんでもない方法で,バイトを辞めてしまったのである。

他のバイトも,順次(普通の方法で)辞めることにした。

 

これはこれで非常識なのだが,この行動にはいちおう背景がある。

 

以前,有給のインターンシップをしていた某社で,人事の人が,これまた日本人らしい人で,

アルバイトを解雇したいのに,解雇をするという電話をするのが気まずいという理由で,社長にも報告しないまま,ひたすら電話をすることから逃げ回り

結局,解雇した(と上層部は認識していた)アルバイトが出勤してきてしまい,社長が収拾にあたる,という光景を目撃したことがあった。

双方にとって,これほど無益な話はない。

授業の開始時間と終了時間が等しく守られるべきであるのと同様に,雇用契約にせよ,他のどんな関係にせよ,始まりも終わりも明示的に,というのが,

この日以降,筆者のポリシーとなったのである。

(ただし,社会は未だに黙示主義で動いている人が多いようだ。このポリシーが原因で,*******時代,周囲の無責任のために,相当に苦しめられることになる)

 

しかし,寒い日も暑い日も,40インチのタイヤを履いたバカみたいなクロスバイク*2で,三鷹から花小金井まで,あちこちで働いていたのをやめたことで,時間的にもずいぶん楽になった。

 

職業や習慣というのは,面白いもので,一度サイクルを作ってしまうとそれに違和感を覚えることは少なくなり,近くでこれを指摘してくれる第三者がいないと,深みにはまっているときは,どこまでも深みに落ちてしまう。

 

アルバイト掛け持ちによる過重労働が,どうもこの頃の酒浸りの原因であったようだ。筆者は次第に健康を取り戻し,事業に邁進するようになってゆく。

 

 

*1:引用元:磯丸水産@新宿 : ラーメン食べたら書くブログ

*2:高知から持ってきたAnchor UC9を改造したものである

なぜ犯罪が起きるのか

なぜ犯罪が起きるのか。先日,非常にシンプルな答を思いついた。

 

確実に,

自身の生産力を超過した利得を得られるからである。

 

ひとは,(ルミネエストで買い物をするために?)限られた時間でより多くの利得を得ようと,必死に励むものであるが,普通の方法を使う限りは,おのずと限界に突き当たる

そこで,不動産投資などの,自身の生産力と関係がなく資産が増加する投資スキーム的なものが流行するのであるが,こちらは,生産活動と異なり,リスクが高い。経営だってそうだ。事業は常に失敗の可能性があるし,環境が変化して,経営者の実力と関係なく,事業が立ちゆかなくなることも多い。

ところが,犯罪行為はこの点,リスクが低い。

 

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

 

▲国民の富の総量は,国民のうち,生産的な労働に従事する人の比率によって決まる。ある年に国民の生活に充てることができる財貨の量は,その年に生産された生産物の総量から,固定資産の維持や生産に充てられる量と,非生産的な労働の維持に充てられる量,および通貨制度の維持に充てられる量を引いた量に,過去に生産されたものが,備蓄または固定資産の形で保存されているところから,必要に応じて取り出して消費した財貨の量を加えたものである……要するに,FX取引みたいに急激には増えないのである

 

より正確には,リスクを管理することができる。すなわち,発覚のリスクが高いときは犯行に及ばなければよいし,リスクが低いとき,得られる利得に比してコストパフォーマンスがよいときは,犯行に及べばよい

この点,残業代不払いなどは,優良案件なのである。前職*******の提携先であった(スポーツITソリューションという会社を合弁で作っている),あの電通さえ,誰ひとり逮捕されずに,会社が罰金50万円を支払って終わりである。東大卒のエリートひとり潰して,50万円どころじゃない長時間をタダ働きさせて,巨額の配当と役員報酬を手に入れ,バレた場合に限って50万円であれば,これほど素晴らしいビジネスはない。

もちろん,中には,利得が低く発覚の恐れが高い犯罪に手を出すことを避けようとしない人もいるが,これは,カボチャの馬車への投資を避けようとしない人がいるのと同じことである。

 

いわゆるギャンブラーというのは,リスクを厭わない人たちである。起業家の一部もそうだ。ところが,犯罪者というのは,貪欲でありながら,臆病であり,しかも公共性を破壊することや,他人を陥れることを厭わない人々であるということができる。ブラック企業と団体交渉をしたときに,当の社長が,何度呼びかけても,どんなに必要でも,隠れ回って出て来ないというケースを,想起せざるを得ない。

しかし,こんな卑劣な人々が,市場社会には,はびこっている。先日も,ソフトバンク10兆円ファンドのパートナーであるサウジアラビアの皇太子が,実は殺人事件に関与していたということが,被害者が最後に仕掛けたワナのために明るみに出た。桁違いのカネがあるところ,常に,暴力や詐欺,不正がある。

 

結局,犯罪の世界,ヤミの世界に足を踏み入れるか否かは,足るを知るか否かであるように思える。べつに仙人の生活をしろと言っているのではなく,自らの感覚によって知覚できる限度を富の目標とするならば,最悪でも,与沢翼みたいにひどいデブになるだけで済む。 

しかし,他人と比較し,自慢して見せびらかすための富を目的としてしまうと,登り詰めれば登り詰めるほど,犯罪の世界に近づいていく。例の孫正義と張り合おうものなら,殺人以上の何かをしなければならないかも知れない。

犯罪者を許さないこと,良識ある国民の連帯によってこれを排除すること,関わらないようにすること,いずれも大切だが,何よりも,虚栄心に囚われないようにすることに努めたい。

 

人生を快適なものにするすべてのもの――それを運命はゆたかに彼に与えたが――を誇ることもなく、同時に弁解がましくもなく利用し、そういうものがある時にはなんら技巧を弄することもなくたのしみ、無い時には、別に欲しいとも思わなかったこと

 

 

 (紙原稿から書き起こし)

*******と*****社長から学んだ,ちょっとしたこと

今日は,珍しく,筆者の前職である*******と*****社長から学んだことをひとつ,書き出してみたい。ちなみに,以下のこと以外にも,非常に研究熱心であることは大きな美点だと思うが,これは論証を俟たないことなので,ここでは言及しない。

 

自慢もエネルギーのもと

**社長の著書はお読みだろうか。基本的に,自慢話の連続である。官報を見る限り,毎年平均して3000万円の赤字を出していて,うなるほどあった資本金も激減しているので,数字だけを見ると,優秀な経営者という評価は困難だと思う(この辺の立ち入った話やリンク先は,和解協議の意向があるからということで,今現在公開している以上の情報は一切追加できない)。

しかし,昔話したときのことを振り返っても,ブログを見ても,何というかウキウキ感満載で,ヘリとか自転車とか楽天の社長とかワインとか何十周年とか……自慢話が引きも切らない。

つい最近までは,このように数字不相応の自慢ばかりしている事から明らかなように,彼は幼稚で,自らの非行を棚に上げてプライドだけを守ろうとしたので,無用に紛争の拡大を招き,株主始め多くの人に迷惑をかけるのだと批判的に考えていたが,あまりの退屈さに負けてスピノザの『エチカ』を手に取ったところ,こんなことが書いてあった。

 

第4部定理53

謙遜(劣等感)は徳ではない。すなわち,理性からは生じない。

証明

謙遜は人間が自己の無能力を観想することから生じる悲しみである。しかし,人間が自己自身を真の理性によって認識する限り,かれは自己の本質を,言い換えれば,自己の能力を認識するものと思われる(第3部定理7による)。だからもし人間が自己自身の観想するにあたり,自己のある無能力を知覚するとしたら,それは彼が自己を真に認識することから来るのではなくて,むしろ彼の活動能力が阻害されることから来るのである……(以下略) 

 

第3部定理7

各々の物が,自己の有に固執しようと努める努力は,その物の現実的本質にほかならない。

証明

各々の物の与えられた本質から,必然的に色々なことが生ずる。また物は,その定まった本性(ほんせい)から必然的に生ずること以外のいかなることをも為しえない。ゆえに,各々の物が,単独であるいは他の物とともにある事をなし,あるいはなそうと努める能力ないし努力,言いかえれば,各々の物が自己の有に固執しようと努める能力ないし努力は,その物の与えられた本質,すなわち現実的本質にほかならない。

 

要するに,今君ができる事こそが君の本質じゃん?それが理性的にわかっていれば,今君ができる事について考えるし,実際できる事をやるじゃん?それなのに,劣等感を抱いてネガティブになって,あれもこれもできないって悩むのは理性的じゃないぜという事だ*1が,筆者には,けっこう思い当たる節がある。

 

鳥商社を設立して以降,母からは,一度だけ「会社を作ってから天狗になった」と叱られたことがあるが,筆者は,基本的には,会社を作ったことも,売却したことも,tOriPayのことも,何もかも,聞かれなければ,必要以外の人には言わなかった。一見すると秘密主義のようだが,ウソをつくのはいやなので,聞かれたら最低限のことは答えていたから,秘密主義というつもりではなかった。

ちなみに,多摩信用金庫の担当者や,*******の同僚から,皮肉*2で「社長!」みたいに言われるのは,相当にしんどかった。立場上そういう事になっているというだけで,筆者自身が,その辺の荷担ぎ労働者と比べて本質的に何か違うものではないということは,筆者自身が一番よく分かっていたからである。

 

こんな僕でも社長になれた

こんな僕でも社長になれた

 

 ▲ふつう,「社長」になるのは,嬉しいことらしい。筆者の場合,アイデンティティの置き場所が分からなくなって,精神的に不安定になった。

 

要するに,良くも悪くも自信がないので,恥をかく可能性が少しでもある以上は,なるべく表に出たくなかったのである。実際,筆者のSNSの使い方の下手さは,知人全員がひとり残らず知っている。

しかし,失業者らしく膨大な空き時間を手に入れてみたところ,今度は,この時間の使途に困るようになった。何か始めてみようと思ったはいいものの,今ひとつ情熱的になれない。生活がかかっている,義務である,などの理由があれば動けるのに……と歯がみした。

この原因は,もしかすると,自分の挙げた成果を人に見せず,黙っておく習慣にあるのではないか,と,**社長について考えた結果,ひらめいた。周囲を見渡せば,インスタは大流行しているし,ZOZOの社長はTwitterで宇宙旅行を自慢しているし,友人もみな,大きな名誉と金銭を手に入れるべく,その進捗をちょくちょく自慢しながら,がんばっている。

一方,筆者の態度は,**社長いわく,

 

「君さ,マルクス主義経済の学者みたいな話し方をするよね。ぼくの親が学者だから,周りに沢山いた。よく知ってるよ。本当に話し方,考え方が似てる」

 

というわけである*3。少なくとも,宇宙旅行と相容れないのは間違いない。「オレのことは今日から,MZと呼んでくれ!」なんて,一生言えないだろうなあ。成功を自慢する意味での自伝なんか,間違っても出版しないだろう。ちなみに**社長の自伝は,中国語版まで存在する。鳥商社関係の失敗談は,面白いからそのうちKindleで出版するかもしれない。

 

(和解のため画像を削除しました)

 ▲中国語版『*******』。「收入」だと「年収」か「営業利益」に取られかねない気がするのだがいいのだろうか(売上高が五億と言いたいのだと思う)。

 

先日,用事があってルミネエストの8階飲食店街に(22年生きて初めて)足を踏み入れたが,他人に見せびらかす以外に効能がない服を着た若者がひしめき合っていて,ものの30秒で体調が悪くなった。既に混雑していて,しかも,内容物の割に価格が高い飲食店のために並ぶ人々の気持ちが,やはり一切分からず,改めて,もう都心には住めないと観念させられた。それでも,このルミネエスト的な空間こそが,同年代の多数のみならず,**社長はじめ,人々が生きている舞台なのである。

 

筆者はもう,ヤミの資本も暴力事件も懲り懲りであるが,あちらの世界から,人に自慢するという目標を持てば,何かにのめり込むことができるということは,学んでもよいかなと思った。

狭小住宅問題も解決して電子ピアノも広げたことだし,このブログで大々的に自慢することを目的に何か頑張ってみようか。

 

(手書き原稿から書き起こし)

*1:と思う

*2:信金の担当者は多分皮肉ではないのだが,筆者は「こんな民生用の安アパートで「社長」なないだろう……と死にそうな思いだった

*3:どうせ関係者が見ているので念のため書き加えておくが,この発言自体は相当に妥当なので,思い出話として紹介しているまでであって,批判等の趣旨ではない

狭小住宅をやめるとわかること

前回に引き続き,狭小住宅をやめることのメリットについて話したい*1

 

実家に居たころはそれなりに趣味があったのに,今や「無趣味だ」との非難をほしいままにしている筆者であるが,最近,重要なことを思い出した。
なんと,「分からない事は,暇な時間があればいつでも資料を取り寄せて調べ,研究することができる」といういわば当然のことを思い出し,5年ぶりに図書館に足を運んだ。そして,その書籍の束を,どうどうとリビングの机に置いたのである。

先日までは,狭小住宅のために精神的な余裕がなく,また作業机に置くとそのせいでほかの作業が一切できなくなるので,書籍を借りることも買うことも徹底的に控え,書類という書類はスキャンして捨てていたのである。


5年ぶりというのは,ちっとも大袈裟な議論ではない。高校生の頃に,高知城下の図書館に行って以来,すこしも図書館を利用していないので,5年ぶりなのである。
もっとも,本を読んでいなかったわけでない。Kindleを利用して読んだ書籍の数は100冊を下らない。統計的には,筆者は,月間3冊弱の本を読んでいる。しかし,その時間も空間もなかったので,図書館で実際の本を手に取ることはしていなかった。

 

近頃はよく,夜になると外で活動することができず,屋内でも,眠いから注意力を要することはできないので,あまりにも手持ち無沙汰であるから,つい飲酒に向かっていた。
しかし,全日本断酒連盟のウェブサイトによれば,飲酒習慣自体に問題があるというより,なぜ酒を飲まずに生きてこられなかったのかという根本の所に問題があるのであって,これを解消しない限りは,何度でも再飲酒することになるという。

 

「酒」ではなく、自分の問題として認めることです。 私たちはあまりにも多くのものを失ってきました。 「酒が好き」だけでは説明できません。私たちには飲む理由がありました。 酒の力を借りなければ心の安定が保てなかったからです。 飲み過ぎてアルコール依存症になったのではなく、依存症になるまで飲まなければ生きて来られなかった…この事実を認めることです。


……あまり禁酒の話をすると,筆者が相当重度のアル中であるかのような印象を与えてしまうので良くない*2が,結局この観点に立ち,飲酒をそもそもしていなかった高校以前の時代に,答を見出そうと考えた。

すると,例の高知城下の図書館*3で本を借り,読んでいた頃の筆者を思い出すことができた。
たしか当時は,家があまりにも貧しいので,職安に通う傍ら*4この図書館に出向き,ルソーの『人間不平等起源論』を読んだことがある。やべえよ……意味分かんねえよ……


人間不平等起源の話が始まると思いきや,ルソーの自分語りが先に出てきて,しまいには家庭教師か何かのお姉さんがきれいだとかそんな話に至り,困惑したことを覚えている。
そんなことはどうでもよいのだが,つまり,昔は,分からないことがあったら調べることにしていて,その為の主要ソースとして図書館があったのである。

ところが,最近は,昔と同様に色々な疑問を思いつくし,経営者をクビになってからは,その時間もあったのに,まったく調べものをせず,分からない事は,なかったことにしていた。


さらに記憶を掘り返すと,大学に行っていたころは,三鷹市井之頭の狭小県人寮を拠点に,少しは調べものをしていた。何かしらの質問をする目的で教授の研究室に突撃したり,教授の自宅近くの喫茶店で,時間を取ってもらったこともある*5。当時はブックオフで毎月2万円前後を費消していたという記録も残っている。
その書籍類も今では8冊しか残っていないのであるが*6,図書館は利用していなかったものの,まだまだ,知的好奇心が残っていたのである。

 

そこから転々と転居を繰り返したものの,書籍はハコに入れて大事にしていたのであるが,当時勤めていた*******未払賃金を請求したところ,翌朝一番に呼び出されて保管場所の占有を取り上げられて,『処分同意書』なるものにサインさせられてしまったので,ほぼ全部なくなった。おー怖い怖い……

特に大事なので手元に置いていたものさえも杉並区の狭小住宅で処分のやむなきに至り,現在の8冊に行き着くのである。

 

▼座右の書。金銀の価格変動のところは読み飛ばして一向に差し支えないので,経済活動の本質を理解するために読むべき一冊*7

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

 

 

 

なお,コンピューターで調べものをすることは,基本的にはない。「参照する」程度のことはするが,メディアとしては一切信用していないのだ。
情報をアウトプットするツールとしてのコンピューターは信頼しているが,インプットするツールとしては,よほど工夫された暗記用のサービスを除いて,使い物にならない。


小学生みたいに何でも書き写すのが良いというわけではないが,コンピューターの場合は,人間が手を動かしてページをめくる場合と違い,ごくわずかの労力によって画面の内容自体をスライドさせることで情報をインプットするので,どうにも記憶に残らないのだと思う。夏見たドラマの内容をいちいち覚えていないのと全く同じことで,オーディオビジュアル的な情報の摂取手段は,感覚を刺激する能力には秀でているものの,あまりにも受動的であるために,思索の用に供する情報には適さないように思う。


禁酒の話に戻るが,こういうわけで,かつては,分からない事は書籍を調達して調べていたし,このブログの昔の記事だって,よく見れば当時読んでいた書籍の内容が色濃く反映されている。
ところが,本をハコから出すことが空間的にも時間的にもできなくなってから,どうも,ものすごく反知性的な生活習慣になっていたようだ。

 

「時間的に」の部分は後の記事に譲るが,みなさん,内向的な性格の人は,都心の狭小住宅に住むとバカになって酒浸りになりますよ。


ちなみに大学に行くと,生涯賃金は4500万円増加するが,実家から出て上京するのであれば,生活費だけで年に120万円は掛かるはずだし,学費も入学金を含めれば平均的に毎年100万円はかかるというべきだから,1000万円弱を費消するといってよいだろう。
親に借りてもらうにせよ,自分で借りるにせよ,1000万円を卒業後35年かけて返済すると,利息総額は400万円にも及ぶ。
とすれば,そのメリットは3000万円程度に過ぎず,中目黒のマンションひとつ購入することができない。残業代が出ないことで有名なクリエイトエス・ディーの廣瀬泰三社長のような六本木のマンションなど,ゆめのまたゆめだ。

 

善良な生活習慣がすでにあるのに,これを放棄し,または結果的にこれが破壊されるような状況を自分から作り出してまで,東京に来ることはない。来るとしても都下に留めておこう。おじさんとの約束だ。

*1:あーバカみたいだ。じゃあ上京当初から,八王子かどこか,家賃が安いアパートに住んでおけば良かったよ

*2:純量にして毎日平均40ミリリットルぐらいを飲んでいる

*3:県立図書館。市立図書館に統合するということで,潰されてしまったらしい

*4:学校権力に屈服するのがいやだったので,高校の就職課にはいっさい話を持ち込まなかった

*5:ケインジアン岩井克人先生である

*6:残りは捨てたものが大部分,貴重なものはスキャン代行サービスに出してしまった

*7:アフィがついてますが筆者のじゃなくてはてなブログのです